送り出し機関について企業が知るべきチェックポイントや認定要件を解説
皆さんは「送り出し機関」というワードを聞いたことはありますか?技能実習制度がニュースになると必ずと言っていいほど、このワードを耳にします。制度上、雇用主側や実習実施機関が直接関わらない場合があり「あまりよく知らない」「受け入れ企業側は関係ない」と思っている企業の方も少なくないのではないでしょうか。
ですが、外国人を雇用する上で「送り出し機関」はとても重要な役割があり、外国人雇用を考えている企業も違法にならないためにも正しく知っておく必要があります。
本記事で詳しく解説していきます。
目次
送り出し機関について知っておくべき理由
技能実習制度では監理団体と送り出し機関が直接のやり取りするため、受け入れる企業はあまり関係ないと思われがちですが、採用する外国人を斡旋するのは送り出し機関の役割です。
送り出し機関については、最近ニュースなどでも話題になっているように悪質な機関も多く存在します。技能実習生の場合は特に、来日前に負荷のかかる契約などを行っていないかどうかが、職場への定着や雇用後のパフォーマンス向上に大きく影響します。
例えば、来日前に高額な借金をさせるような契約を送り出し機関がさせている場合があります。
こういった行為をする送り出し機関から人材の紹介を受けていないかどうかを知るために、正しい送り出し機関の在り方について知っておく必要があるわけです。
送り出し機関とは
送り出し機関とは、「海外現地で求人を募集し、日本へ送り出す機関」のことです。
送り出し機関というと技能実習制度のイメージが強いですが、本来は技能実習制度に限った機関ではありません。送り出し機関を通じて採用される外国人が取得する在留資格は、技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務などが多いでしょう。
技能実習制度の団体監理型では、必ず送り出し機関を利用しなければなりません。技能実習制度においては、送り出し機関は技能実習生候補者に事前講習を行い、監理団体の要望に応じて選考し、日本へ送り出すために海外での必要な手続きを代行します。
技能実習制度における送り出し機関の役割と認定の要件
技能実習制度では、送り出し機関は、技能実習生を監理団体の元へ送り出す団体のことです。
基本的には海外現地の団体です。技能実習には団体監理型と企業単独型の2つの方法がありますが、送り出し機関が関係するのは団体監理型に限ります。送り出し機関の役割・業務としては、技能実習生として日本で実習をしたい現地の外国人を集め、そのなかから企業が求める人材を年齢、性格、学歴、日本語能力や技術などを踏まえて選抜して送り出します。
また、技能実習生の候補者が日本へ入国する前の教育、入国のための手続き、送り出し後のサポート、帰国後のフォローなども送り出し機関の役割です。
企業単独型
日本の企業等(実習実施者)が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を実施する方式
団体監理型
事業協同組合や商工会等の営利を目的としない団体(監理団体)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等(実習実施者)で技能実習を実施する方式
出典:外国人技能実習制度とは|JITCO
送り出し機関は認定制で、認定されるための要件は規則第25条に定められています。
送り出し機関の要件
規則 第25条における外国の送出機関の要件(概略)
・所在する国又は地域の公的機関から推薦を受けている
・制度の趣旨を理解して候補者を適切に選定し、送り出す
・技能実習生等から徴収する手数料等の算出基準を明確に定めて公表し、技能実習生に明示して十分理解させる
・技能実習修了者(帰国生)に就職の斡旋等必要な支援を行う
・法務大臣、厚労大臣又は外国人技能実習機構からのフォローアップ調査、技能実習生の保護に関する要請などに応じる
・当該送出機関又はその役員が、日本又は所在国の法令違反で禁錮以上の刑に処せられ、刑執行後5年を経過しない者でない
・当該送出機関又はその役員が、過去5年以内に
–保証金の徴収他名目を問わず、技能実習生や親族等の金銭又はその他財産を管理しない(同様の扱いをされていない旨 技能実習生にも確認)
–技能実習に係る契約の不履行について違約金や不当な金銭等の財産移転を定める契約をしない(同様の扱いをされていない旨 技能実習生にも確認)
–技能実習生に対する人権侵害行為、偽造変造された文書の使用等を行っていない
・所在国または地域の法令に従って事情を行う
・その他取次に必要な能力を有する
出典:外国人技能実習制度とは|JITCO
上記の要件を満たすと、技能実習制度における「送り出し機関」に認定されます。
特定技能制度における送り出し機関の役割
特定技能制度における送り出し機関は技能実習とは少し違い、特定技能制度においては、必ずしも送り出し機関を経由する必要はありません。
しかし国によっては、政府認定送り出し機関の利用が義務付けられていますので、確認が必要です。
送り出し機関の利用は必須なのか
現状、技能実習の実習機関の多くは団体監理型を利用しており、必ず送り出し機関の経由が必要です。また特定技能制度においても、政府認定送り出し機関の利用が必須となっている国が複数あることから、外国人採用において送り出し機関の利用は切っても切り離せない存在です。
特定技能制度などにおいて送り出し機関を利用しない方法は、国内在住の外国人を採用する方法です。すでに日本へ送り出された後なので、基本的には送り出し機関と関わることはありません。また、特定技能は転職が認められています。海外現地から受け入れる技能実習生の場合は転職は不可能です(転籍の場合を除く)。
二国間協定について
「二国間協定」とは、外国人採用における日本と送出国が外国人雇用を円滑に進めること、外国人を保護すること(悪質な仲介事業者の排除など)を目的とした国同士の取り決めです。
技能実習制度と特定技能制度などで締結をしており、「技能実習に関する二国間の協力覚書(取決め)」「特定技能に関する二国間の協力覚書」を作成しています。締結国は以下から確認できます。
▶参考:技能実習に関する二国間取決め(協力覚書)|厚生労働省
送り出し機関と問題
昨今よく報道される技能実習生の失踪ですが、その背景には制度上の問題と送り出し機関の問題があります。
技能実習生は制度上、原則転籍ができません。就労を目的としていないため、職を変える転職という考え方がないからです。
そのため、受け入れ企業が法律に反した雇用を行っている、過度な労働を課す場合であっても実習先を辞めて別の場所で実習を行うということが困難です。(企業都合などの場合は、転籍という形で別の企業で実習をする場合があります。)
また、借金の返済があるため働かないわけにはいかず、やむを得ず失踪してしまう実習生が発生しています。
本来、技能実習法で違約金を取ることは禁止されています。日本政府は、対策として送出国との二国間取決めを行い、送出国による送出機関の認定、問題のある送り出し機関の情報共有などを行うことで悪質な送出機関の排除に努めています。
しかしながら、技能実習生を違法に就労させる実習先や悪質な送り出し機関は引き続き横行しており、技能実習生の環境が非人道的であると世界的にも問題視される状況となっています。
送り出し機関の選び方
送り出し機関の見るべきポイント
見るべきポイントとして、以下の内容をチェックすると良いでしょう。
- 現地政府から認定されている送り出し機関かどうか
- 送り出し機関の規模や実績、現在紹介可能な候補者の人数、教育をしている人の経歴(例えば介護関連なら介護福祉士として日本で働いていた、など)
- 入国前の教育はどんなことをしてもらえるのか。日本語や日本のルール・マナーについて教育することはもちろんのこと、技能実習を行う分野についても教育をしてから送り出してくれるのかどうか。
- 技能実習生や特定技能外国人が送り出し機関に支払っている費用の金額が適正であるかどうか。国によっては上限が決められています。
- 窓口となる担当者の日本語能力。現地の方で日本語があまり得意ではない場合、勘違いによるすれ違いなどが起きやすくなります。
- 継続的な受け入れを予定している場合は、安定的に人材を供給できるかどうか。
- 技能実習生の場合は日本国内に駐在事務所・支社を置いているか否か。トラブルが起きた際に監理団体と連携して即時に対応でき、また、外国人も母国語で相談できる相手が日本国内にいるため安心できます。これは基本的には技能実習生を受け入れる場合においてです。
実際に上記に当てはまるかどうかは、ヒアリングするしかありません。特定技能制度などの場合は、送り出し機関または間を取り持っている人材紹介会社に確認しましょう。
技能実習制度を利用する場合は直接確認することは難しいので、監理団体に確認するしかありません。また、監理団体は送り出し機関を選定することも役割ですので、監理団体そのものがきちんと役割を果たし、コンプライアンスなどを遵守しているかを見極めましょう。送り出し機関の見極めだけでなく、監理団体は技能実習生の監理も行う非常に要となる機関です。慎重に検討することをおすすめします。
下関市、北九州市で外国人雇用でお悩みがあれば、ぜひはやし行政書士事務所にご相談ください。