外国人雇用の契約書を書く際の注意すべきポイントについて解説
外国人雇用する際は、言語や文化の違いからトラブルが起こりやすくなるため、雇用契約書の作成を必ずおこないましょう。今回の記事では、外国人雇用の契約書を書く際の注意すべきポイントについて解説しますので、契約書作成の参考にご覧ください。
目次
日本人雇用と同様に、必ず契約書を作成しよう
日本人を雇用する際も契約書を作成していると思いますが、外国人が相手の場合も同様に必ず契約書を作成しておきましょう。
口約束等は基本的にないと思いますが、外国人の中でも日本語ネイティブではない場合「うん、うん」と相槌を打っていても、内容まできちんと理解できていないことがあります。口約束では契約をしたあとで「そんなことは聞いていない」、「知らなかった」などと言われる可能性があります。
また、海外では契約書を重視する国もあり、基本的に契約書に書いていないものは、ないと解釈されても致し方ありません。トラブル(裁判上のものも含む)が起こったときを想定すると、お互いが合意した証拠である契約書を取り交わしておくべきでしょう。労働者、雇用者のお互いの安全を確保するためにも、労働契約は書面にすることをおすすめします。
外国人雇用における雇用契約書の役割とは?
日本人の場合も、「労働条件通知書」または「雇用契約書」を発行しますが、外国人の場合は、トラブル防止のために、できるだけ母国語で「労働条件通知書」または「雇用契約書」を作成・交付する必要があります。なぜなら、外国人の場合、労働条件通知書や雇用契約書は「在留資格を申請するための書類」という役割もあるからです。
在留資格を申請した後、外国人本人に審査官から連絡が行くことがあります。この際、契約内容についてきちんと受け答えできないと、在留許可がおりない可能性があるため、本人が契約内容について理解し、他人にも説明できるようになっておく必要があるのです。
このように、外国人自身が労働条件をしっかりと理解するためにも雇用契約書は必須で、かつ本人が理解できる母国語で作成しておく必要があります。
雇用契約書と労働条件通知書の違い
雇用契約書と労働条件通知書は、いずれも給与や職務内容が記載されている点は同じです。しかし、労働条件通知書はあくまで雇用者から労働者への一方的な「通知」にすぎず、労使間の合意も不要です。一方で、雇用契約書は労働者と雇用者がお互いに合意したということを証明する書類となります。
ちなみに、労働基準法では「労働条件通知書」の発行は義務付けられていますが、「雇用契約書」の発行は義務ではありません。しかし、外国人を雇用する場合は、労働条件通知書よりも、お互いが合意した証拠になる「雇用契約書」のほうが、トラブルの予防になるためオススメです。
外国人の雇用契約書の必須項目とは?
契約の内容については、「法律や条文について問題がないか」などをチェックすることが前提になります。
では、そのうえで外国人ならではの項目や、注意点にはどのようなものがあるのでしょうか?
外国人向けに記載すべき事項
まず、外国人の雇用契約書を作成する際に、特に注意が必要なポイントについて解説します。
就業の場所、従事する業務
業務内容が、本人の学歴や履修科目と関連性があり、在留資格申請書類の内容と矛盾がないように気をつけてください。また、必ず在留資格の範囲内におさまる業務内容とします。
賃金、計算及び支払方法、賃金の締切日、支払の時期、昇給に関する事項
外国人の場合、在留資格によってできる仕事が制限されているため、必須事項ではありませんが、業務のために必要な研修について、「どのような研修なのか」、「どこで研修をするのか」などを記載しておくことをおすすめします。
たとえば、単純労働が認められていない在留資格の場合でも、業務に必要な研修の中に、単純労働が含まれることはあります。この場合、業務に必要な1年程度の研修であれば、単純労働が含まれていても認められることがあります。そのため、「業務に必要な内容の研修であること」や「研修期間」を雇用契約書に明記し、内容を別紙にまとめておくと、出入国在留管理庁への説明にもなります。
雇用契約の期間
雇用契約の期間は、外国人の「在留期間」と合わせる必要があります。これらのポイントを押さえないと、最悪の場合、在留資格を超えた活動となり、在留資格の取り消しなどにもつながりかねません。十分に正確な記述をしてください。
日本人と同様に記載しておくべき事項
- 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、就業時転換
- 退職に関する事項
最低限これらの項目を記載してください。
在留資格が取れなかった場合の対応を記載しておく
働くために必要な在留資格の取得を停止条件とした雇用契約書にすることで、問題をクリアすることができるため、契約書に記載しておく必要があります。
停止条件付雇用契約とは
停止条件とは、ある条件が成立することを条件にしたものをいいます。例えば、学校を卒業したら採用するという契約内容の場合、「学校を卒業したら」という条件が実現したら発効する契約です。学校を卒業できなかった場合は、契約は効力を持ちません。このような条件を停止条件といいます。
外国人の雇用契約書の場合は、「在留資格を取得できたらこの雇用契約が発効する」という設定にしておく必要があります。契約書の条文としては、「本契約の効力は、就労可能な在留許可を得ることを停止条件とし、その効力を生じる」というような書き方になります。
この言い回しのまま外国人に読み聞かせてもおそらく理解されないでしょう。もっと平易な表現に変えて丁寧に説明する必要があります。「在留資格を取れなければ、あなたを雇用する契約はなくなります」ということをきちんと口頭でも伝えてください。
契約書の作成から交付までの流れを解説
契約書は外国人の母国語でも作成することが望ましい
労働基準法第15条2項では、契約内容と実際の労働が異なる場合、労働者は即時に契約を解除することができると定められています。これは外国人の場合も同様です。さらに、その外国人が14日以内に帰郷する場合は、企業が渡航費用を負担しなければなりません。せっかく採用したのに、契約の内容と実際の労働が違ったという理由で職場を辞め、外国人から故郷へ帰る費用を請求されるリスクがあるということです。
上記のようなリスクを回避するためにも、可能であれば外国人の母国語に合わせた契約書を発行することをおすすめします。外国人の母国語での契約書の作成が難しい場合は労働条件通知書を母国語で発行してください。
厚生労働省のサイトには外国語での労働条件通知書の雛形がありますので、必要な部分を書き換えるなど活用しましょう。
契約書作成から交付までの流れ
まずは労働条件通知書から作りましょう。雇用契約書と記載項目は大体同じなので参考になります。
必要な項目を付け足すなどして、契約書の体裁にしていきます。できれば雇用契約書に詳しい専門家(弁護士・行政書士・社労士)に目を通してもらうと安心です。企業と外国人がお互いに保管するため、同じものを2通作ります。契約書は企業と外国人と双方の署名押印が必要です。
雇用する外国人に一通り説明した後にサインをしてもらってください。出来上がった契約書は、お互いに1通ずつ持っておきましょう。
雇用前、雇用後に関する書類については下記の記事をご覧ください。
下関・北九州の企業必見!外国人雇用の入社前・入社後の手続き及び必要書類を解説
まとめ
外国人を雇用する場合は、トラブルになる可能性があるため、必ず雇用契約書を取り交わしましょう。雇用契約書を作成するときは、外国人が理解できる母国語で、できるだけ細かく給与や待遇などを記載することが重要です。
在留資格の申請にあたり、出入国在留管理庁に提出する書類は、雇用契約書ではなく労働条件通知書でも構いませんが、お互いの意思を確認するためにも契約書を交わしておくことをおすすめします。
労働条件通知書については、外国語版が厚生労働省のサイトで公開されています。契約書よりも作りやすいと思うので、一度目を通しておくことをおすすめします。
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