帰化申請の審査基準・手続きの流れ・注意すべき点を解説

帰化申請とは,国籍を変更する手続きのことをいいます。
国籍変更の許可を得るためには厳しい条件に沿った審査がなされます。
今回は、帰化申請の条件として必要となる7つの条件について徹底解説していきます。
例外的なケースについても解説しますので、最後までご覧ください。

帰化申請とは?

帰化申請とは、冒頭でも説明した通り国籍を変更する手続きを言います。
言い換えると、「日本人になるための手続き」です。

帰化申請が許可されれば、日本の戸籍を持ち、ビザを更新することなく日本に住み続けられます。
【帰化申請のメリット】

  • 日本のパスポートが取得できる
  • 日本への自由に出入りできる(再入国許可手続きが不要)
  • 選挙権,被選挙権が与えられる
  • 警察官など国家公務員になれる
  • 住宅ローンなど金融機関からの融資が受けやすくなる
  • 在留カードの更新など、外国人に定められた手続きがなくなる

ただし、必ず帰化が許可されるということではありません。これからご紹介する帰化の条件は、最小限の条件であり、帰化を許可するかどうかは、法務大臣の裁量で決定されます。

また,日本では二重国籍を認めていないので,帰化が許可されると,母国の国籍は失うことになります。

帰化に必要となる7つの条件については,日本国民と特別な血縁関係等があれば条件の一部が緩和されるように例外的なケースもあります。
この例外的なケースについても可能な限り触れていきますので,ご確認ください。
では帰化の条件をご紹介します。

帰化申請の流れについて

帰化申請の手続きの流れは,次のようになります。

①法務局で初回相談(必要書類の案内)
      ▼
②必要書類の収集、申請書の作成
      ▼
③法務局で書類確認
      ▼
④法務局で帰化申請の受付
(帰化申請書類一式を提出)

      ▼
⑤法務局で面談
      ▼
⑥帰化の許可
(法務局から審査結果の通知)

      ▼
⑦市区町村で帰化後の手続き

一般的に④から⑤までの間が約3ヶ月,⑤から⑥までの期間が約6ヶ月から8ヶ月かかると言われていれるため,法務局に帰化申請書類一式を提出してから帰化申請の結果が出るまでは約1年の時間を要します。

ただし,帰化申請にかかるトータルの期間でいうと①から③の準備期間もあるので,帰化申請の準備を始めてから結果が出るまでとなると,確実に1年以上かかります。
そのため,帰化申請を短期間で終わらせるためには,①から③の準備期間をいかに短く終えるかという点が重要になるのです。

ご自身で帰化申請の準備をされる場合、申請書類の内容や収集した書類の確認のために,何度も足を運ぶことになります。
法務局は平日しか開庁していないため、土日休みの会社員の方だと平日に休みを取って法務局へ行く必要があります。また、現在はどこの法務局も帰化申請の相談は「事前予約」が必要となっており、仕事の空き時間に法務局へ立ち寄るといったこともできません。また、帰化申請で提出する書類には、発行日から一定期間経過すると「無効」扱いになってしまうものもあるため、途中で期限が切れてしまうと、役所で再度取得することになります。

平日にまとまったお時間が取りにくい方や役所での書類取得に不安がある方は、帰化申請の専門家にサポートを依頼することもおすすめします。

参考:法務省|帰化許可申請

帰化申請の条件

帰化をするための条件は,国籍法に明記されており,条文上は6つあります。しかし,条文では明記されていない条件が1つあります。

それは,日本語能力の条件です。
では,帰化申請の「7つの条件」について見ていきましょう。

住所条件(国籍法第5条第1項第1号)

1つ目の条件として,申請時点で引き続き5年以上日本に住んでいる必要があります。
ここで重要なのは,「引き続き」という部分です。
合理的な理由のない長期出国がある場合や在留資格が途切れてしまった場合には、引き続きとはならず、年数のカウントががリセットされてしまいます。

1回の出国で3ヶ月以上、年間で合計180日以上の出国がある場合は、長期出国と見なされる可能性が高いです。
なお、合理的な理由のない長期出国の具体例として、プライベートでの海外旅行が挙げられます。一方で合理的な理由のある長期出国の具体例としては、仕事での海外出張が挙げられます。
この場合ですと、海外出張が会社から命令であることがわかる資料(出張の辞令書など)を提出することで、合理的な出国であると認められる場合もあります。

また、就労系の在留資格を持っている方は、3年以上就労していることが必要となります。
ここでいう就労とは、正社員や契約社員という雇用形態で判断するのではなく、フルタイムで働いているかどうかが重要となります。
そのため、アルバイトやパートでの就労期間はカウントされません。

住所条件として、引き続き5年以上日本に住んでいる必要があり、就労系の在留資格を持っている方は3年以上就労していることが必要になります。

在留資格について、まとめている記事もありますので併せてご覧ください。

在留資格ってどんな種類がある?在留資格まとめ

能力条件(国籍法第5条第1項第2号)

2つ目の条件は、「能力条件」と呼ばれ、帰化を希望する申請人自身に行為能力があることが必要とされています。行為能力とは法律用語のひとつで、簡単に言うと「法律行為を単独で確定的に有効に行うことができる能力」のことです。

未成年者は「行為能力がない」とされていますので、単独で帰化するには成人している必要があるのです。ここで重要となるのが、日本だけでなく本国の法律上でも成人している必要があるという点です。

素行条件(国籍法第5条第1項第3号)

3つ目の条件は素行要件といって,素行の良さが求められます。

素行の良さとは,簡単にいうと「ルールを守って真面目に生活している」ということです。犯罪など法律に反する行為を行っていないことはもちろん,税金や年金の未払いはないかなど,義務をきちんと履行しているかどうかも審査されます。法律さえ守っていればいいということでもなく,地域社会に迷惑がかかることをしていないかについても審査されることになります。

生計条件(国籍法第5条第1項第4号)

4つ目の条件は「生計条件」と呼ばれるもので、お金に困らずに日本で暮らしていけるかという条件です。
法令に具体的な年収額が規定されているわけではありませんが、年収300万円程度が目安とされています。扶養する家族がいる場合は、その分必要な年収も上がります。

ただし、年収が300万円程度あったとしても、借金がたくさんある場合などはそれらも審査に影響します。
安定して日本で生活できているかが重要な条件となります。

この生計条件は、帰化申請をする本人だけでなく、一緒に住んでいる家族や同居している恋人、友人についても審査の対象となります。
自分自身は生計条件をクリアしていても、同居している人がクリアできない場合は不許可になるリスクが高まる点に注意してください。

重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)

5つ目の条件は「重国籍防止条件」です。日本は二重国籍を認めていないので、帰化が許可された場合は、本国の国籍から離脱しなければいけないという条件です。

ここでの注意点は、本国側の法律によっては、国籍を離脱できない場合がある点です。

本国での兵役義務を終えてない場合や、税金を滞納したままにしている場合などには、本国で国籍の離脱を認めないとしている国もあります。
このような場合には、たとえ審査して帰化の許可がほぼ確実であったとしても、本国の国籍から離脱できなければ日本への帰化は許可されません。

帰化許可申請をする前に、問題なく国籍から離脱できるか確認することをおすすめします。

ただし、これにも例外があります。日本国民との親族関係や特別な事情があると認められるときには、この条件が免除されることもあります。

憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)

6つ目の条件は「憲法遵守条件」です。

これは、日本の憲法を守ることを誓約する条件です。ご存知のとおり、憲法は日本で最上位の法規範であり、その他の法令は憲法の内容に従って施行されています。日本国を形成する基礎ともいえる憲法を守っていくことが、帰化の条件の一つになっています。

そのため、クーデターによる暴動や国会襲撃を行うような、日本国にとって危険な思想を持つ団体に所属している人は日本に帰化できないとされています。

法務局で帰化申請を行う際、憲法を遵守する誓約書に署名する流れになっています。

日本語能力条件(+α)

最後に国籍法上は明文化されていませんが、実務上確立している条件として、日本語能力条件があります。

日本人となる以上、日常生活に支障のない程度の日本語能力(読む、書く、話す)が必要になります。一般的に小学校3年生レベルの日本語力が必要とされています。

帰化申請の条件の例外パターン5選

ここからは、帰化「7つの条件」の例外パターンをご紹介していきます。
日本人や日本国と特別な関係を持つ方が対象になります。

日本生まれの方(住所条件緩和)

1つ目に紹介するパターンは、「日本生まれの方」です。
日本生まれの方の場合、国籍法第6条第1項第2号に以下の規定があります。

日本で生まれた者で引き続き三年以上日本に住所若しくは居所を有し、又はその父若しく
は母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの

これは、日本生まれであり、かつ、「日本に継続して3年以上在留している」か「実父もしくは実母が日本生まれ」のどちらかに当てはまれば,日本での在留期間が5年未満でも帰化が許可される可能性があることを示しています。

日本人の配偶者の方(住所条件+能力要件緩和)

2つ目にご紹介するパターンは、「日本人の配偶者」です。

現在日本に住民登録をして住んでいる外国人で、「日本に3年以上在留している + 日本人と結婚している」もしくは「日本人と結婚して3年以上 + 日本に1年以上在留している」方であれば、引き続き5年在留していなくても帰化申請できます。(住所要件の緩和)。

さらに、このケースに該当する場合は、帰化する申請人ご自身が未成年であっても帰化申請できます。(能力要件の緩和)。

ちなみに、外国人同士のご夫婦であっても、一方配偶者が帰化許可相当であれば、一方の配偶者も「日本人の配偶者」と見なされて、ご夫婦同時に帰化申請することが可能です。

日本人の実子の方(住所条件+能力条件+生計条件緩和)

3つ目にご紹介する例外パターンは、「日本人の実子」です。

こちらは国籍法第8条第1項第1号に規定があり、「日本国民の子(養子を除く。)で日本に住所を有するもの」は、「住所条件」、「能力条件」、「生計条件」を満たしていなくても帰化許可になり得るとされています。

つまり,日本人の実子であって,現在日本に住んでいれば(住所条件の緩和),未成年であっても(能力条件の緩和),世帯として収入が低くても(生計条件の緩和),帰化が許可になる可能性があるということです。

日本人の養子の方(住所条件+能力条件+生計条件緩和)

4つ目に紹介するパターンは、「日本人の養子」です。

緩和される帰化の条件は、既に説明した「日本人の実子」と同じですが、適用のための条件が「日本人の実子」と異なります。

具体的にどこが違うかというと、日本への在留期間と年齢についての2点です。
「日本人の実子」は日本に住んでさえいればよかったのに対し、「日本人の養子」では、1年以上日本に在留している必要があります。

もう1つの年齢については、「日本人の実子」の場合、年齢に関する規定はありませんが、「日本人の養子」の場合、養子縁組の当時、本国法で未成年であることが必要となります。

留学生の頃から日本にいる方(住所要件緩和)

5つ目のパターンは、在留資格「留学」を持って在留している留学生です。

留学生の場合、最初は日本語学校に入学し、その後四年制の大学へ入学・卒業、場合によっては大学院に進学し、5年以上「留学生」として在留している方が多くおられるかと思います。

年数だけ見れば「5年」を超えていますが、留学での在留期間は、帰化の条件である「引き続き5年」にカウントされません。
在留資格「留学」が、所属する教育機関を卒業したあと、本国へ帰国することを前提とした在留資格だからです。

しかし、実務上では「留学」の在留資格を持って在留していた方でも、「留学2年+就労系の在留資格で在留3年」として5年在留していれば,「引き続き5年」の中に留学期間の2年をカウントする運用がなされています。

帰化条件の緩和・免除対象者(簡易帰化制度)について

一般の帰化許可条件が緩和・免除されている帰化を「簡易帰化」と呼びます。

本人が血縁関係、地縁関係その他、なんらかの意味で普通の場合よりも日本国と密接な関係のある場合には、帰化の許可条件が緩和または免除されます。

帰化申請で注意する点

ここからは、帰化申請で注意すべきポイントについて解説します。
まず、帰化申請はビザ申請に比べて用意する書類が多くなるということです。次に、帰化申請は自分のタイミングで申請できないということです。この2点を念頭に準備を進めないと、いつまでたっても申請できないということになりかねません。

用意する書類が多い

帰化の申請書類は、入管でのビザ申請と比べて多くなります。
法務局で初回相談をすると、申請に必要になる書類について説明を受けることができます。用意する書類が一覧になった「点検表」が渡され,基本的にはこの点検表に沿って準備を進めることになります。
なかには、本国から取り寄せないといけない書類もあり日本の公文書の場合は「ここで取得できます」という案内もしてもらえますが、実際にどうやって取得するのかまでは法務局で把握していません。そこはご自身で役所のホームページで調べるか電話で問い合わせることになります。

自分のタイミングで申請できない

法務局は、原則としてすべて事前の予約が必要です。相談であれば、飛び込みでも対応してもらえることがあるかもしれませんが,申請は予約なしで受付してもらえません。

公文書には提出できる有効期限がある

帰化申請では、住民票や税証明書などさまざまな種類の公文書を取得して提出しますが、「発行から6か月以内のもの」など、有効期限が設定されているものがほとんどです。「6か月もあれば余裕をもって準備できるだろう」と思われがちですが、前述のとおり法務局への申請には予約が必要で、自分のタイミングで提出できません。

帰化申請は行政書士に頼むのがおすすめ

用意する書類が多く、自分のタイミングで申請できない帰化申請は、ひとりですべて行うハードルがとても高いです。特に、平日仕事している会社の方であればなおのことです。
帰化申請に詳しい行政書士に依頼することで、書類の収集や作成といった作業がスムーズになります。

まとめ

今回は、帰化申請について解説しました。

帰化申請は、実際に条件に沿った書類を集めてみようとすると,取得方法がよくわからない、現在住んでいる市役所では取得できなかった、しなければいけない手続きを忘れていた、などの様々な問題に直面することが多くあります。

このような問題が起きないように、専門の行政書士にお願いすることをおすすめします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です